卓越した医師として世界中を飛び回った日野原ですが、その足元を支え続けたのは妻の静子さんと3人の息子(長男・次男・三男)でした。
静子夫人は、多忙を極めて家を空けがちだった日野原を献身的に支え、家庭の切り盛りを一手に引き受けていました。しかし、晩年に静子夫人が認知症を患うと、日野原は多忙なスケジュールの合間を縫って自ら妻の介護に深く関わるようになります。ベッドサイドで優しく手を握り、日々の出来事を語りかける姿は、病院スタッフの間でも深く記憶されています。
2013年、静子夫人が93歳で先立つと、日野原は「彼女がいたからこそ、私は自分の時間をすべて医療と社会のために捧げることができた」と深い感謝を公の場で語りました。完璧な超人としてではなく、一人の夫として、父親として家族を深く愛し、時に自らの不在を詫びながら紡いだ人間関係の温かさが、彼の慈愛に満ちた診療姿勢の根底にありました。