記憶に新しい「令和の米騒動」では、スーパーの棚から米袋が完全に消え去り、全国的なパニック買いが起きました。当時、農林水産省が発表した作況指数統計データは「101(平年並み)」を示していたにもかかわらず、なぜ店頭では深刻な枯渇が起きたのでしょうか。流通専門家や大手卸業者への取材によって、統計の数字に表れない3つの構造的要因が明らかになっています。
第1に、精米歩留まりの急激な低下です。猛暑による高温登熟障害で割れ米や未熟米が多発した結果、玄米を精米して白米にする際の歩留まりが通常より約3〜5%悪化しました。収穫量(玄米ベースの重量)が見かけ上保たれていても、実際に消費者が口にする白米の流通可能量は数十万トン規模で目減りしていた計算になります。
第2に、インバウンド需要の爆発と外食産業の急回復です。訪日外国人観光客による米消費量の拡大と外食チェーンの需要急増に対し、長年の需要減少を前提に作付面積を抑え込んできた国の生産調整(減反政策の系譜)との間で需給バランスが完全に狂いました。
第3に、情報拡散による家庭の防衛的買いだめと流通の目詰まりです。SNS上で「米がない」という画像が拡散したことで、普段は5kgしか買わない世帯が一斉に10kg〜20kgを備蓄し始めました。国内の家庭用流通在庫は数週間分のバッファーしかないため、わずか数パーセントの需要急増でサプライチェーン全体が機能不全に陥ったのです。