大勝軒を理解する上で避けて通れないのが、「東池袋大勝軒」と「永福町大勝軒」の比較です。両者は同じ「大勝軒」の屋号を掲げていますが、創業の背景から味の設計思想に至るまで、全く異なる個性を持っています。
東池袋系は、創業者・山岸一雄氏が考案した「特製もりそば(つけ麺)」を主軸とするスタイルです。豚骨や鶏ガラの濃厚な動物系スープに煮干しやサバ節などの魚介出汁を合わせ、酢の酸味、砂糖の甘み、唐辛子の辛みをバランスよく配合したタレで仕上げます。モチモチとした自家製中太ストレート麺を冷水で締め、温かいスープにくぐらせて食べるスタイルは、今日のつけ麺文化の直接的なルーツとなりました。
対する永福町系は、1955年に草村賢治氏が創業した「永福町大勝軒」を頂点とする中華そば専門店です。看板メニューは永福町系煮干し中華そば一本。厳選された大量の煮干しと宗田節、豚骨などを煮出した澄んだ琥珀色のスープに、表面を覆う熱々のカメリアラードが特徴です。草村商店特製の縮れ中細麺が標準で2玉(約300g弱)入り、銀色の丸トレイに大きなレンゲとともに出される圧倒的なボリューム感が伝統となっています。