だが、その伝統的な職人技が今、強烈な試練に晒されている。2026年現在の窃盗現場を支配しているのは、熟練のピッキング技術を持つ単独犯ではない。秘匿性の高い通信アプリで「荷物の運び出し」「簡単な回収」といった名目で集められた素人の実行役たちだ。
彼らは手口原票に名前も載っていない見知らぬ若者であり、現場の痕跡を隠す知恵すら持たない。窓ガラスをハンマーで乱暴に叩き割り、足跡をベタベタと残しながら数分で室内を荒らし回る。被害者と鉢合わせすれば、窃盗は一瞬で「事後強盗」や「致死傷」へと変貌する。これまでの三課のセオリーであった「手口から犯人像を逆引きする」手法だけでは、背後に潜む指示役に到底手が届かない事態が頻発している。