買収プロセスにおいて最大の障壁となったのは、間違いなく全米鉄鋼労働組合(USW)との確執だった。「ラストベルト(さびついた工業地帯)」の雇用を守るという政治的スローガンが飛び交う中、組合側は徹底的な雇用保障と既存協定の完全遵守を要求。一時は平行線をたどった交渉だが、妥協点となったのは長期的かつ具体的な地域投資の約束だった。
レイオフなしでの設備近代化、地元若年層の積極採用、そして年金基金の拠出維持。これらが法的に口証されたことで、現場の組合員たちの空気も次第に変化した。かつて排斥運動を展開していたベテラン作業員も、新導入された自動化ラインのトレーニングに励んでいる。伝統の雇用を守りながら近代化を進めるという難題は、双方の血の滲むような譲歩によってかろうじて結実した。