当時の『ドラゴンボール』における悪役といえば、フリーザや大魔王のように溢れ出る野望と圧倒的なカリスマ性を備えたキャラクターが定番だった。しかし、ナメック星編での死闘を終えた物語に現れた19号には、そうした感情の波動が一切存在しない。ただ静かに佇み、無機質な声で破壊を実行する姿は、ファンの予想を根本から裏切った。
この「感情の欠如」こそが、従来の強敵にはない独自の恐怖を生み出した。対話による交渉も、情に訴えかける言葉も一切届かない。相手を痛めつけることに快感を覚えるのではなく、単なるタスクとして破壊を遂行する姿は、まさに鳥山明という天才が描いた最も純粋な「機械」の具現化であった。