猗窩座というキャラクターの魅力は、その強さの裏に隠された致命的な「矛盾」にある。弱者を心底嫌いながらも、女を絶対に喰わないという奇妙な流儀。それは、かつて病弱な父や恋雪という「守るべき弱者」を守り切れなかった自分自身に対する激しい憎悪の裏返しに他ならない。声のトーン一つで、その歪んだ精神構造の理由を納得させてしまうのが石田の凄みだ。
声優誌のインタビューやアニメファンの考察でも度々議論されるのが、石田の持つ「声の質感」だ。どこか哀愁を漂わせるその声は、悪事を働く鬼でありながら、同時に哀れむべき悲劇の主人公でもあるという複雑なニュアンスを見事に同居させる。暴力的なまでの攻撃性と、ガラス細工のように壊れやすい繊細さ。この二つのベクトルが交わる点を見事に捉えた演技が、映画を単なるバトルエンターテインメントから重厚な人間ドラマへと昇華させている。