人間時代の名は継国巌勝(みちかつ)。戦国時代、武士の家に生まれた彼は、幼少期から剣の才能に恵まれ、自身の鍛錬に疑いを持たなかった。しかし、その自負を一瞬で打ち砕いたのが、生まれながらにして特別な痣を持ち、呼吸の極意を体得していた弟の縁壱だった。
何をどうしても届かない天才への歪んだ劣等感。どれほど血の滲む努力を重ねても、縁壱が軽々と見せる神業の領域には至れない。その敗北感と執着こそが、四百年もの長きにわたり彼を苛み続けた呪縛の正体である。鬼となりてなお、彼の胸中にあったのは「弟を超えたい」という切実で悲しい願いに過ぎなかった。