これほどの酷暑に直面しながら、ドイツの一般住宅におけるエアコン普及率はわずか3〜5%程度と極端に低い水準にとどまっています。日本の家庭用エアコン普及率が9割を超えている状況と比較すると、その差は歴然です。この極端な低さの背景には、技術的な問題だけでなく、長年培われてきた独自の文化や法律の壁が存在します。
第一の要因は、ドイツの伝統的な「建築様式と環境意識」です。冬の寒さに耐えるため、ドイツの住宅は分厚い石造りや外断熱構造が主流で、熱を外に逃がさない設計になっています。これが夏場には裏目に出て、一度室内に熱がこもると夜間になっても温度が下がらない「蓄熱オーブン状態」を生み出してしまいます。
第二の障壁が、賃貸契約および景観保護に関する厳格な法規制です。ドイツでは人口の過半数が賃貸住宅に暮らしていますが、外壁に穴を開けて室外機を取り付ける工事には家主や建物全体の所有者組合の厳密な合意が必要です。「美観を損ねる」「冷房は温室効果ガスを増やし環境に悪影響を与える」「人工の冷風は風邪を引く元」という根強い固定観念もあり、エアコンの新規設置は極めて高いハードルとなっています。