静岡県島田市の山間部、川根町家山の小高い丘陵地に根を張る牛代の水目桜は、平成18年(2006年)に島田市指定天然記念物へ登録された銘木です。樹高は約20メートル、枝張りは東西約25メートル、目通り幹周囲は4メートルを超え、遮るもののない茶畑の真ん中で四方にバランスよく枝を広げた端正な樹形を誇ります。
植物学上の標準和名は「エドヒガン(江戸彼岸)」ですが、なぜ地元では「水目桜(みずめざくら)」の名で呼ばれ続けているのでしょうか。島田市教育委員会や地元保存会の記録によると、樹皮に横方向の皮目が多く、カバノキ科の落葉高木「ミズメ(別名:アズサ)」に酷似していることから、古くから地域住民の間で愛称として定着したと伝えられています。
川根町は日本有数の銘茶「川根茶」の産地。急傾斜地に拓かれた茶園は、大井川の川霧によって極上の茶葉を育んできました。その茶畑の開墾と変遷を3世紀以上にわたって静かに見守り続けてきたのが、この牛代の水目桜です。単なる観光名木にとどまらず、過酷な自然と共生してきた農民たちの暮らしと祈りの象徴として、今日まで大切に護美活動が続けられています。