ジコ坊というキャラクターに唯一無二の生命を吹き込んだのが、実力派俳優の小林薫氏だ。温厚で世慣れたおじさんの声から、土壇場で見せる冷徹な謀略家の声への切り替えは見事というほかない。威圧感ではなく「愛嬌」をまとわせることで、観客に彼の善悪を簡単に判断させない重厚な立体感を与えた。
時代劇アニメというジャンルにおいて、ここまでの生々しさとユーモアを併せ持ったキャラクターは稀有だ。宮崎駿監督は彼を単なる冷酷な刺客としてではなく、生き抜くために知恵を絞る中世の逞しい人間像として描き出した。この緻密な人物描写こそが、四半世紀を超えて愛される理由でもある。