世間が抱く「伊藤英明」のパブリックイメージは、メガヒットを記録した『海猿』シリーズの仙崎大輔役で決定づけられたと言っていい。荒波に飛び込み、人命を救う潜水士を演じるためにビルドアップされた分厚い胸板と逞しい腕回り。あの屈強なヒーロー像こそが、長年にわたる彼のアイコンだった。
それゆえに、年齢を重ねて細身のシルエットへとシフトした際のギャップは、大衆にとってあまりにも鮮烈だった。「激やせ」「老け込んだ」というセンセーショナルな言葉が飛び交ったのは、彼がかつて放っていた超人的なマスキュラリティの残像が強烈すぎたことの裏返しでもある。大衆が求める過去の幻影と、一人の表現者として成熟を求める本人のスタンスとの間に生じた温度差が、無用な病気説を増幅させる土壌となっていた。