蜃気楼の正体は、つまるところ「大気密度の不均一さによる光の屈折」である。空気は温まると密度が低くなり、冷えると高くなる性質を持つ。光は密度の異なる空気の層を通過する際、密度の高い方向へと曲がる性質があるため、私たちの目には本来存在しない場所に物体が浮遊しているように映るのだ。
この現象は大きく分けて「上位蜃気楼」と「下位蜃気楼」の2種類に分類される。上位蜃気楼は、上が暖かく下が冷たい空気の層ができることで発生し、実際の風景の上方に反転した像や引き伸ばされた像が現れる。世界的に見ても出現例が少なく、富山湾の魚津などで春先に観察されるものはこのタイプだ。一方、下位蜃気楼は地表や海面が極端に熱せられ、下が暖かく上が冷たい状態のときに生じる。アスファルトの照り返しで見える「逃げ水」や、冬の海で島が浮いて見える「浮島現象」がこれに該当し、日常的にも比較的遭遇しやすい。