京都と並び、日本屈指の美しい格子状都市として知られるのが北海道の札幌市です。旅行者の視点では同じように見える両都市の碁盤の目ですが、その建設時期と設計思想には約1100年の隔たりと全く異なるアプローチが存在します。
1869(明治2)年、明治政府の開拓使判官・島義勇(しまよしたけ)や岩村通俊(いわむらみちとし)らが主導した札幌の都市計画は、平安貴族の風水思想ではなく、19世紀アメリカの近代合理主義都市(ワシントンD.C.やシカゴなど)をモデルにしています。寒冷地特有の雪対策や馬車・鉄道の輸送効率、そして大規模な火災を防ぐための実用性が最優先されました。
札幌のグリッド最大の特徴は、都心を東西に横断する幅約105メートルの「大通公園」が巨大な防火帯(火除地)として設計された点です。木造家屋が密集しても大火が延焼しないよう計算され、南北を分割する基軸として機能しています。古代の儀礼的秩序から生まれた京都と、極寒の大地を開拓するための実利から生まれた札幌――。同じ格子状でありながら、背景にある思想は好対照を描いています。