この問いに対する解は、単なる筋肉量の増加という安易な成長劇ではない。信がこの巨大な矛を身体の一部として使いこなせるようになった最大の転換点は、朱海平原での死闘、そして宿敵・龐煖との決着に隠されている。
作中で長年描かれてきた「将軍の重み」という伏線。武の極致を求め孤高を貫く龐煖に対し、信は自らが背負う仲間たちの命、倒れ去った敵の無念、そして信じ続けてくれた飛信隊の思いを刃に乗せた。王騎が討たれたあの日から積み重ねてきた犠牲と誇り。それらが信の身体を満たした瞬間、大矛の柄を通じた凄まじい手応えが彼の肉体と同調したのだ。
矛が軽くなったわけではない。背負うものが増えたことで、その重さに負けない「器」が信の中に完成したのである。原泰久は、単なる腕力ではなく「関係性の蓄積」によって武器が覚醒するという独自の世界観を、静かに、しかし力強く証明してみせた。