エレンが命を落とさなければならなかった最大の理由は、初代王フリッツへの歪んだ愛憎に囚われ続けていた「始祖ユミル」の呪縛を解く鍵が、ミカサ・アッカーマンの決断にあったためです。2000年間、自らを奴隷として縛り付けていた始祖ユミルは、「愛する者を自らの手で殺害してでも、正しい道を選び取る人物」の登場を待っていました。
エレンの首をミカサが切り落とし、その唇に口づけを交わした瞬間、ユミルは王への執着を手放し、巨人の力はこの世界から完全に消滅しました。エレンの死は、巨人のいない世界を創造するための絶対条件だったのです。
完結編において読者に極めて強い情緒的衝撃を与えたのが、「道」の空間でアルミンに対してだけ見せたエレンの剥き出しの人間味でした。常に冷徹な超越者として振る舞ってきた彼が、涙を流しながら床を叩いて放った告白は、彼の本質が年相応の弱さを抱えた一人の青年であったことを証明しています。
「ミカサに男ができるのは嫌だ」「オレのことだけをずっと引きずっていてほしい、死んだ後も10年は引きずっててほしい」という見苦しいほどの本音。自らの手で母親を死へ誘導せざるを得なかった過去改変の重圧に押し潰されながらも、愛する少女と一緒に生きたかったという無念こそが、エレン・イェーガーという人間の核心でした。