昔から童話や都市伝説として語り継がれてきた熊に出会ったら死んだふりという俗説ですが、現代の野生動物対策においてこれは「完全な誤り」と位置づけられています。無防備にその場に倒れ込む行為は、熊に対して無抵抗の餌または排除対象を差し出すに等しく、かえって致命傷を負うリスクを跳ね上げます。
ただし、至近距離で突進され物理的接触が不可避となった最終局面においてのみ、「防御姿勢(クラーチポジション)」を取ることが推奨されます。うつ伏せになり、両手で後頭部と首の後ろを固くガードし、リュックサックで背中を守りながら膝をお腹に抱え込むことで、頸動脈や内臓への致命的な損傷を防ぐ最後の砦となります。
また、熊鈴効果の真相についても冷静な理解が必要です。本来、熊鈴やラジオは「人間の接近をあらかじめ熊に知らせ、遭遇を未然に防ぐ」ための予防器具です。しかし、人里近くに出没する一部の個体や、人間の残飯の味を覚えた「新世代クマ(アーバン・ベア)」に対しては、鈴の音が「食料の存在を知らせる合図」として認識されてしまう逆効果の事例が専門家の現地調査で報告されています。見通しの悪い沢沿いや風の強い尾根では過信せず、視界の確保と周囲への警戒を併用することが不可欠です。