本作のもう一つの主役は、日本列島を縦断するロケーションそのものだ。きらびやかな都会のネオンから離れ、寂れた温泉街、霧深い峠道、寂寞とした北国の海岸線へと風景が移り変わるにつれ、画面の温度が徐々に下がっていく。
だが不思議なことに、北へ進めば進むほど、二人の距離は縮まり、画面に宿る「生の体温」は熱を帯びていく。旅先で出会うご当地グルメ――特にタイトルにも冠された蟹を貪り食うシーンは圧巻だ。蟹の殻を割り、無心で身を口に運ぶ行為は、生命を体内に取り込む儀式に他ならない。
「食べることは、生きること」。言葉にすれば陳腐に聞こえる真理が、追い詰められた男女の食事風景を通して、凄まじい説得力をもって突きつけられる。