女性コーラスグループ・シュガーは、笠井木綿子さん(愛称:ミキ/キーボード・メインボーカル)、長沢久美子さん(愛称:クミ/ギター・コーラス)、毛利公子さん(愛称:モーリ/ベース・コーラス)の3名によって結成されました。音楽学校での出会いをきっかけに結成された実力派バンドであり、当時としては極めて珍しい「自ら楽器を演奏しながら緻密なコーラスワークを展開するガールズバンド」の先駆け的存在でした。
1981年11月にリリースされたデビューシングル『ウエディング・ベル』は、オリコン週間チャート最高第2位を記録し、累計売上は60万枚以上の大ヒットを達成。翌1982年には『第33回NHK紅白歌合戦』に初出場を果たし、一躍トップスターの仲間入りを果たしました。天使のような高音ハーモニーに乗せて呟かれる「くたばっちまえ アーメン」のセリフは、作詞・作曲を手掛けた古谷美智代氏の鋭い人間描写と相まって、流行語として社会現象を巻き起こしました。
しかし、栄光の影で彼女たちは深刻なジレンマに直面していました。昭和アイドル全盛期において、テレビ番組側が求めたのは「可愛らしい衣装を着て毒舌セリフを放つコミカルなアイドル」としての記号性でした。一方で、3人はもともとウェストコースト・ロックやAOR、フォークに強い影響を受けた生粋のミュージシャン志向を持っていました。
音楽プロデューサーや関係者の証言によると、ヒット以降はテレビ出演と全国営業に追われ、本来目指していた楽曲制作やスタジオワークの時間が大幅に制限されていったといいます。その後も『アバンチュールは雨のカフェテラス』など質の高いシングルやアルバムを発表したものの、『ウエディング・ベル』の巨大なパブリックイメージを超える商業的ヒットを生み出すことは容易ではありませんでした。
デビューから約6年が経過した1987年、シュガーは正式に解散を発表しました。ネット上では「メンバー間の不仲説」が長年噂されてきましたが、これは完全な誤解です。真相は、20代後半を迎えたメンバーそれぞれの「女性としての自立と結婚」「ミュージシャンとしての方向性の違い」、そして過密スケジュールによる心身の疲弊が重なった結果、全員で話し合いを重ねて導き出した前向きな決断でした。