2026年の春夏コレクションを振り返ると、各国のハイブランドが提示したランウェイにはあえて野暮ったさを残した「ギーク・シック(知的なダサさ)」が溢れていた。モデルたちの表情を切り取っていたのは、80年代のヴィンテージ感を演出する重厚なアセテートフレームだ。あまりに無菌室的で洗練されすぎたデザインへのアンチテーゼとして、無骨で力強い黒のフレームが再び脚光を浴びている。
欧州の有力メゾンでクリエイティブを担うデザイナーは、「完璧すぎるスタイルは今の時代、どこか味気なく映る」と指摘する。あえて顔のパーツを大胆に分断するような黒い枠組みを重ねることで、計算されたアンバランスな魅力が生まれる。この「隙」と「崩しの美学」こそが、いま世界中の感度が高い層で共感を集めている最大の原動力だ。