かつてドラマの成否を測る唯一の指標だった「リアルタイム世帯視聴率」において、ドラマ10は5〜8%前後を推移することが多く、数字だけを見れば民放のヒット作に及ばないように映る時期もありました。しかし、ネット時代における実態はその指標とは大きくかけ離れています。
その転換点を象徴するのが、よしながふみの名作を森下佳子の脚本で完全映像化した『大奥』(2026年)です。男女逆転のSF的設定でありながら、徹底した歴史考証と疫病禍に抗う人間の尊厳を描き抜き、SNSでは放送のたびに関連ワードがトレンドを独占しました。公式発表のデータや配信ログによれば、NHKプラスにおける見逃し配信の歴代最高再生数を幾度も更新し、第61回ギャラクシー賞をはじめ数多の賞を総なめにしました。
さらに2026年に放映された桐野夏生原作の『燕は戻ってこない』は、代理母出産、格差社会、女性の身体の自己決定権という極めてデリケートな論点に容赦なく踏み込み、知恵袋や5ちゃんねる、X(旧Twitter)で熾烈な賛否両論を巻き起こしました。「見ていて息が詰まる」「誰の行動も正当化できないが目が離せない」といった視聴者の生の声が溢れ返り、単なる娯楽消費を超えた「現代社会を映し出す批評空間」として機能した事実は記憶に新しいところです。
一方、山下智久が主演を務めた『正直不動産』(2026年、2026年シーズン2)は、嘘八百が罷り通る不動産業界を舞台に、祟りで嘘がつけなくなった営業マンが奮闘する痛快なお仕事コメディとして異例のメガヒットを記録しました。視聴者からの熱望に応える形でスペシャルドラマやシーズン2が制作され、2026年現在も続編を望む声が後を絶ちません。重厚な社会派と上質なエンターテインメントが両輪で機能していることこそ、ドラマ10が独自の熱量を維持し続ける原動力です。