彼の指揮官としての歩みを語る上で、1992年夏の甲子園で繰り広げられた星稜高校戦は避けて通れない。当時、圧倒的な打撃力を誇っていた松井秀喜選手に対し、5打席連続敬遠という徹底した勝負回避策を決断したシーンは、日本中を巻き込む大議論を巻き起こした。教育的観点からの批判が噴出する一方で、チームを勝利へ導くための徹頭徹尾したプロフェッショナリズムとして称賛する声も根強く残る。
「勝ちにふさわしい準備をし、ルールの中で全力を尽くす」という徹底したリアリズム。あの夏の一戦は、感情論に流されがちなトーナメント戦において、勝利への責任とは何かを突きつけた事件であった。あれから数十年が経過した現在でも、その決断はスポーツのあり方や戦略の本質を論じる際の試金石として参照され続けている。