腰パン(英語圏では「Sagging(サギング)」と呼ばれる)の最も有力な起源とされているのが、アメリカの刑務所カルチャーです。米国の刑務所では、受刑者が首吊り自殺を図ったり凶器として使用したりすることを防ぐ目的で、ベルトの着用が厳しく禁止されていました。支給される囚人服のサイズが身体に合わず大きすぎる場合、ズボンはおのずと腰骨の下へとずり落ちます。この刑期を終えて出所した元受刑者たちが、ストリートに戻ってもそのスタイルを続けたことが、アウトローとしてのタフなアティテュード(姿勢)の象徴となったと記録されています。
この刑務所由来のスタイルをカルチャーへ押し上げたのが、1980年代後半から1990年代のアメリカ東海岸・西海岸におけるヒップホップ文化とスケーターファッションでした。貧困層の少年たちが兄や親のお下がりのオーバーサイズな服を着ていた背景も重なり、バギージーンズをルーズに穿きこなす姿が「体制への反逆」「ストリートの誇り」としてラッパーやスケートボーダーの間で神格化されていきます。
やがて腰パンは「下着を見せること」自体がステータスへと進化します。1990年代にCalvin Klein(カルバン・クライン)やTommy Hilfiger(トミー・ヒルフィガー)といったブランドのロゴ入りボクサーブリーフが登場すると、チラ見せするウエストゴムが自己顕示とブランド消費のシンボルとなり、ストリートのルールとして定着しました。