家族社会学および心理学的な観点から京塚昌子さんの生涯を紐解くと、そこには「自立した表現者の誇り」と「家族愛の純粋な昇華」が見出せます。
昭和中期から後期にかけて、社会が経済成長の波に揉まれる中で、国民は急速に失われゆく「無条件の母性」をテレビの中に求めました。京塚さんはその期待を一手に引き受け、完璧な「母の偶像」を演じ切りました。しかし、それは決して作られた虚像ではなく、実母に対する無償の愛や、共演者・スタッフに向けられた真実の慈愛が根底にあったからこそ、国民の魂を揺さぶる説得力を持ち得たのです。
「結婚して子供を産み育てることだけが母性の証明ではない」。京塚昌子という稀代の女優が歩んだ人生は、自らの信念に殉じ、他者への深い思いやりを通じて巨大な愛を社会に注ぎ込んだ、気高き表現者の生き様そのものでした。