専門的な獣医療の現場で最も警戒されているのが、「仰向け抱っこ」と呼ばれる体勢だ。お腹を上に向けて抱くと急におとなしく固まるため、SNSなどでは「リラックスしている」と誤解されてきた。しかし、これは恐怖が極限に達した際に発動する「捕食者に対する死んだふり(緊張性不動)」に過ぎず、体内ではストレスホルモンが急上昇している。
日本獣医師会の症例報告でも、仰向け状態から急激に正気を取り戻した個体が空中でのたうち回り、床へ叩きつけられて背骨を折る事故が多数報告されている。彼らの骨は軽量化のため非常に薄く、骨格重量は体重のわずか8%程度しかない。強靭な後脚の筋肉が空を切ってキックした自らの力だけで、自らの脊柱を粉砕してしまうことすらあるのだ。
人間の肩の高さまで持ち上げる高所ホールドや、耳をつかんで持ち上げるといった行為も絶対的なNG体勢である。一瞬の油断が、一生の半身麻痺や命の喪失につながる危険性を認識しなければならない。