この名作は、時代ごとに異なる監督・キャストの手によって映画化されてきた。映画『レベッカ』(1940年)は、サスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコックが手がけたアメリカ進出第1作であり、名優ローレンス・オリヴィエとジョーン・フォンテインの卓越した演技によって見事アカデミー賞作品賞に輝いた。だが、当時のヘイズ・コード(映画製作倫理規定)の制約により、マキシムが直接殺人を犯す展開は「事故死」へと改変を余儀なくされた。ヒッチコックは影と光のコントラストを極限まで駆使し、直接的な暴力描写を避けつつも心理的な恐怖を最大化させる手腕を見せた。
対して、現代の映画『レベッカ』(2026年)は、Netflixが製作した新たな解釈の意欲作だ。リリー・ジェームズとアーミー・ハマーが主演を務めた本作は、色鮮やかな映像美とロマンス要素を前面に打ち出している。2026年版では、原作により近い「マキシムの犯罪性」を隠さず描く一方で、後妻「わたし」を単なる被害者ではなく、愛のために共犯者となる強い意志を持った現代的な女性像へと再構築した。クラシックな心理サスペンスと現代的なエモーショナル・ドラマという違いが、両作の明確なコントラストを生み出している。