朝食サービスの原点を辿ると、名古屋市内ではなく、北西部に位置する愛知県一宮市に行き着く。昭和30年代、一宮市は「ガチャ万」と呼ばれる空前のガチャマン景気に沸く世界有数の繊維都市だった。織機がガチャッと響けば万両が儲かる——そんな狂乱の時代、工場内の激しい騒音を避けるため、商談の場は必然的に街の喫茶店へと移っていった。
当時のビジネスマンたちは連日連夜、喫茶店を打ち合わせの拠点として利用した。長時間の滞在に対する感謝と、忙しい客への心遣いとして、マスターがピーナッツや茹で卵を添えたのが始まりとされる。これが評判を呼び、近隣の店舗がサービス競い合いを繰り広げた結果、現在の豪華なスタイルが確立された。地域特有の産業構造と人情が交錯する中で、愛知県独特の喫茶文化が花開いたのだ。