ハチのディスコグラフィの中で、極めて重要な意味を持つのが2017年に発表された『砂の惑星』です。2013年の『ドーナツホール』以降、長らくボカロ制作から離れていたハチが放ったこの楽曲は、界隈に凄まじい衝撃をもたらしました。
『砂の惑星』の歌詞の意味には、かつて熱狂に満ちていたボカロ文化が、流行の消費サイクルや固定化によって徐々に活気を失い、砂漠のような荒野と化してしまった現状への痛烈な批評が込められています。「何もない砂場」「砂漠に林檎の木を植えよう」というフレーズは、過去の栄光に縋るシーンへの警鐘であると同時に、次世代の若きクリエイターたちに向けた「ここから新しいカルチャーを耕せ」という鼓舞のメッセージでもありました。
『マトリョシカ』で見せた狂騒とナンセンスの美学から、シーン全体を俯瞰し未来を切り拓く『砂の惑星』へ。ハチが遺した問題提起は、Ayase(YOASOBI)をはじめとする次世代のボカロPたちに着火し、2026年代以降のボカロ再興・ネット発ポップス全盛期の呼び水となりました。