F-4EJ改の実現を語る上で欠かせないのが、電子機器の刷新と並行して実施された延命改修の真相です。どんなに優れたレーダーを搭載しても、飛行中に主翼が金属疲労で折れてしまっては戦闘機として成り立ちません。
自衛隊は機体の耐用飛行時間を当初想定の3,000時間から段階的に引き上げ、最終的には5,000時間、さらには一部の機体でそれ以上の過酷な運用に耐えうる改修技術を確立しました。航空機メーカーである三菱重工業の技術陣と空自補給処の整備士たちは、機体を部隊単位で解体・点検するデポ整備(定期修理)において、主翼と胴体の結合部、降着装置のピボット部、外板の応力集中個所などを非破壊検査で徹底的に洗い出しました。
微細なクラック(亀裂)を見逃さず、削り出しの補強部材(パッチ)をリベット留めし、腐食対策コーティングを再塗布する。この気の遠くなるような職人技の積み重ねこそが、海外の軍事関係者を驚かせた「日本のファントムは世界で最もピカピカで、最も長く飛ぶ」という伝説の正体です。
自衛隊における戦闘機「魔改造」の系譜は、実はF-4EJ改だけにとどまりません。
- F-86Fセイバー:黎明期のアナログ機にサイドワインダーミサイル(GAR-8)の運用能力を付加した初期の兵装統合。
- F-104Jスターファイター:迎撃専用機でありながら、退役間際には無人標的機(UF-104JA/J)へと全自動飛行の無人化改修を達成。
- F-15J近代化改修(J-MSIP):第4世代の雄であるイーグルに国産AAM-4/AAM-5の運用能力やAPG-63(v)1レーダーを組み込み、現在も最新鋭F-15JSI(スーパー・インターセプター)への進化を継続中。
こうした日本の改修の歴史には、専守防衛という国是と島国特有の地政学的制約の中で、「今あるアセットの能力を極限まで引き出し尽くす」という日本独自の工学的DNAが脈々と受け継がれています。