静寂が支配する店内に、じわじわと脂が炭に落ちる音だけが響く。池川氏の真骨頂は「近火の強火」と呼ばれる独特の焼き技法だ。炭と食材の距離はわずか数センチ。普通なら一瞬で丸焦げになる極限状態の中で、串は絶え間なく回され、絶妙な位置へと打ち替えられていく。
焦がさず、冷まさず、旨味を内部で爆発させる。手元の団扇から送られる風の角度一つで、炭の表面温度は劇的に変化する。計算し尽くされた15秒のドラマ。焼き上がった皮目のパリッとした食感と、噛んだ瞬間に溢れ出るジュワッとした肉汁のコントラストは、まさに職人技の結晶である。