インターネットの自動車コミュニティやSNSでは、「規定値より30〜50kPa高めに入れたらリッター2km伸びた」といった熱狂的な投稿が散見されます。この燃費向上効果の噂は、科学的にどこまで事実なのでしょうか。
タイヤの空気圧を高めると、トレッド面(路面と接地するゴム部分)の張りが強くなり、タイヤの変形量が抑えられます。その結果、走行時の「転がり抵抗」が低減するため、物理的には燃料消費が抑えられる方向に働きます。大手タイヤメーカーや省エネルギーセンターの実験データによれば、空気圧を適正値より高めにセットした場合、転がり抵抗は確かに減少します。しかし、車両全体の燃費向上効果に換算すると、わずか1〜2%前後の改善にとどまるのが一般的な測定結果です。
月間のガソリン代が15,000円のドライバーであれば、浮く費用はせいぜい月額150円〜300円程度。後述する過度な高圧化によるタイヤ寿命の短縮(偏摩耗)で数万円のタイヤを早期交換することになれば、トータルの維持費は確実に赤字へと転落します。燃費のために過度な高圧を狙うのは、まさに「一文惜しみの百知らず」と言わざるを得ません。