県外の人が鹿児島のつけ揚げを初めて口にした際、ほぼ例外なく驚くのがその「圧倒的な甘さ」です。関東や関西のさつま揚げが塩味と魚の出汁を主体とした比較的すっきりした味わいであるのに対し、鹿児島のつけ揚げは濃厚な甘みと芳醇な香りを放ちます。
この独特な甘みを決定づけているのが、鹿児島伝統の醸造酒である「地酒(地酒/灰持酒・アクモチザケ)」と砂糖の存在です。灰持酒とは、もろみに木灰を加えて酸を中和し、加熱殺菌を行わずに保存性を高めた古代製法の酒で、アミノ酸と糖分を極めて豊富に含んでいます。この地酒をすり身に練り込むことで、特有の芳香と照りが生まれ、揚げた際に魚肉のタンパク質をしなやかに凝固させる効果を発揮します。
主原料となる魚のすり身の種類も、味の深みを支える要素です。伝統的には、東シナ海や錦江湾で水揚げされる新鮮な近海魚が使われてきました。
代表的な原料魚には以下のものがあります:
- エソ(飛魚と並ぶ最高級原料):非常に強い弾力(足)と上品な白さ、豊かな旨味を引き出す。
- トビウオ(地元名:トッピー):春から夏にかけて豊富に獲れ、野趣あふれる香ばしさと力強い味わいを与える。
- スケトウダラ:滑らかな食感と成形性を安定させるベース原料として広く併用される。
- アジ・イワシ・サバ:いわゆる「地魚系」のつけ揚げに使われ、黒みを帯びた色合いと濃厚な青魚のコクを醸し出す。
これらの魚肉に、豆腐を少量混ぜ合わせるのも鹿児島流の大きな特徴です。豆腐を加えることで、冷めても硬くならず、ふっくらとしたソフトな口当たりが保たれます。