桑田祐宜のキャリアを語る上で欠かせないのが、彼が人生の青春期を捧げた本格派オルタナティブ・ロックバンド「READ ALOUD」の存在です。彼は幼少期から青山学院初等部、中等部、高等部を経て青山学院大学へ進学という、両親と同じ青学校舎で学生時代を過ごしました。大学時代から本格的にギターとボーカルにのめり込み、複数のインディーズバンドで腕を磨いた後、2012年にREAD ALOUDを結成しました。
当時、業界内では「桑田佳祐と原由子の長男がデビューする」と大きな話題になりましたが、本人はメジャーレーベルからの破格のオファーを断り、小さなインディーズレーベルからのスタートを選択します。公式プロフィールやプロモーションにおいて「桑田」という偉大なファミリーネームを前面に出すことは固く禁じられ、純粋な楽曲クオリティと泥臭い全国ツアーによってファンを獲得していきました。
ミニアルバム『A』や『Equators』など良質なガレージ・ロック作品をリリースし、渋谷CLUB QUATTROなどでのワンマンライブを成功させるなど着実な歩みを見せていたREAD ALOUDですが、2016年10月に突如として解散を発表します。公式に語られた「メンバーそれぞれが新しい道へ進むため」という言葉の裏には、インディーズシーン特有のシビアな現実がありました。
当時の音楽シーンはデジタル配信への過渡期にあり、CD不況が直撃。全国ツアーを自前で回すインディーズバンドにとって、採算ラインを維持しながら活動を継続することは極めて過酷でした。さらに、どれほど名前を伏せてストイックに活動しても、ライブ会場には「桑田佳祐の息子を見に来た」という野次馬的な視線が付きまといました。自らの音楽性で勝負したい純粋なロック志向と、商業的なブレイクを果たせなかった現実、そして二世というレッテルとの果てしない戦いが、活動継続へのエネルギーを摩耗させていったことは想像に難くありません。