この二つの素材を一緒に煮込む料理を、なぜ「いとこ煮」と呼ぶのだろうか。
語源には諸説あるが、硬い根菜類から「おいおい(甥)」煮て、後から小豆などの柔らかいものを煮入れる調理工程から、「甥甥=従兄弟(いとこ)」の語合わせが生まれたという説が有力だ。実に粋なネーミングセンスである。
昭和の稀代の美食家・北大路魯山人も、素材の持つ自然な甘みと風味を活かした素朴な煮物を高く評価していた。過度な調味料でごまかさず、素材同士が出会うことで生まれる滋味を重んじる姿勢。これこそが和食の本質だ。現在、文化庁も地域の食文化継承事業を通じてこうした伝統料理のデジタル保存と普及を推進している。単なる家庭料理の枠を超えた、無形文化財の価値がここにある。