この論争の決定的転換点となったのが、2018年の対談だった。現代数学界の最高峰に君臨するフィールズ賞受賞者のピーター・ショルツと、遠アーベル幾何学の権威ジェイコブ・スティックスが京都を訪れ、望月教授と直接議論を交わしたのだ。
米科学誌『Quanta Magazine』などが大々的に報じたところによれば、両者は論文の核心部である「系3.12」に論理の飛躍(ギャップ)が存在すると主張した。簡潔に言えば、「異なる宇宙の間で数学的対象を同一視する操作において、議論が破綻している」という指摘だった。
これに対し、望月教授側は「ショルツらの指摘は理論を極度に単純化した誤解に基づいている」と反論リポートを公表。議論は平行線のまま決裂した。歩み寄りはなく、溝は決定的なものとなった。