防犯カメラもGPSもスマートフォンもない時代。安浦刑事たちは、ただひたすらに靴底を減らして聞き込みを重ねた。
関係のない近所の噂話に耳を傾け、立ち寄った定食屋のおばちゃんと言葉を交わす。現代の観点から見れば、それは極めて非効率で「タイパ」の悪い作業に映るかもしれない。だが、事件の真相はその無駄話の隙間、人の感情の澱(おり)の中にこそ潜んでいた。最短距離で正解に辿り着くことばかりを強いられる2026年の私たちにとって、汗をかき、寄り道をし、人と直接顔を合わせる刑事たちの姿は、失われた「手触りのある労働」の尊さを思い出させる。