二人の関係性の根底にあったのは、「雷の呼吸における能力の非対称性」と「師匠の愛の受け止め方の違い」です。元鳴柱である桑島慈悟郎(善逸が「じいちゃん」と呼ぶ恩師)のもとで修行を重ねていた二人ですが、才能の偏りは残酷なまでに二分されていました。
獪岳は雷の呼吸の「弐ノ型」から「陸ノ型」までを高水準で習得した秀才でありながら、全ての基本にして神速の一撃である「壱ノ型・霹靂一閃」のみが使えなかったのです。対する善逸は、極度の臆病さから修行から逃げ惑い、基本である「壱ノ型」しか使えませんでした。桑島は「二人で一つ、二人で後継」という共同継子の方針を打ち出しましたが、強い自負心とプライドを持つ獪岳にとって、泣き虫の落ちこぼれと同等に扱われることは耐え難い屈辱でした。
獪岳は善逸を「カス」「泣き虫の穀潰し」と徹底的に見下し、善逸もまた獪岳の傲慢さに怯えつつも、自分にない技術を全て持つ兄弟子として敬意を捨てきれずにいました。この「互いに相手の持っているパーツを憎み、羨望する」歪な関係性が、後の悲劇の引き金となったのです。