安倍晋三という政治家をめぐっては、一般的なイメージと実際の政策決定の間にいくつかの大きな誤解が存在します。
誤解1:「生粋の右派思想による教条的政治を行った」
安倍氏は「タカ派のナショナリスト」とレッテル貼りされることが多かったものの、実際の政権運営は極めてプラグマティック(実利主義的)でした。対中関係においても、尖閣諸島周辺の警戒を強めつつ、2018年には訪中して習近平国家主席と会談し、「競争から協調へ」を掲げて経済協力を進めました。理念を掲げながらも、経済的な実利と安全保障のバランスを冷徹に見極める柔軟性を持っていました。
誤解2:「強者優先で弱者を切り捨てた」
新自由主義的と批判される一方で、実際には給付型奨学金の拡充、幼児教育・保育の無償化、高等教育無償化など、社会民主主義的な再分配政策を数多く主導しました。これらは本来リベラル政党が掲げていたアジェンダを先取りしたものであり、野党の政策的独自性を奪う巧みな政権戦略でもありました。