東京・信濃町にある慶應義塾大学病院。ここが安倍政権の命運を握る「アナザー・コントロールセンター」だった。激務の合間を縫って密かに行われた通院、そして主治医団による緊迫した協議。内閣官房の極少数の側近だけが共有していた診断結果は、常に最高レベルの国家機密として扱われていた。病状の急変が株式市場や為替、あるいは安全保障環境にまで及ぼす波及効果を恐れたためである。
しかし、隠蔽と透明性の狭間で繰り広げられた攻防は、政権内部に深い歪みをもたらした。医師団は即時の休養を勧告し続けたが、政治的判断がそれを拒み続けた。カルテに刻まれた検査数値の悪化と、国会答弁で見せる毅然とした姿。その乖離こそが、長期政権の陰に潜む最大の悲劇だったのかもしれない。