岸部一徳のキャリアの出発点は、1967年にシングル『僕のマリー』でメジャーデビューした伝説のGSグループ「ザ・タイガース」です。当時の愛称は「サリー(Sally)」。由来は、長身で長い脚を揺らしながら歩く姿や、彼が好きだった楽曲にちなんで名付けられたと伝えられています。
当時のポートレートやレコードジャケットを振り返ると、ボーカルの沢田研二(ジュリー)が中性的な美少年として爆発的な人気を誇る一方、リーダーの岸部一徳は身長181cmという当時としては圧倒的な高身長と、彫りの深い端正なマスク、憂いを帯びたクールな眼差しで熱烈な女性ファンを獲得していました。現在見られる温和で飄々とした表情とはまた異なる、洗練されたロックスターのオーラが漂っています。
特筆すべきは、単なるルックス先行のアイドルではなく、卓越したベースプレイヤーであった点です。ポール・マッカートニーの影響を受けたメロディックなベースラインを正確に刻み、熱狂的な歓声で演奏がかき消される過酷なライブ環境下でも、タイガースの屋台骨としてリズムセクションを支え続けました。当時のスタジオミュージシャンや音楽評論家からも「GS界屈指のグルーヴ感」と高い評価を受けていた事実は見逃せません。