海外での介助自死を語る上で避けて通れないのが、外国人受け入れを行うスイスの支援団体ディグニタスである。同団体をはじめとする現地機関が採用する薬物の大半は、高用量のペントバルビタールナトリウム(バルビツール酸系鎮静・睡眠薬)だ。
この物質は中枢神経系を急速に抑制し、服用から数分で深い昏睡状態へ導いた後、呼吸停止を引き起こす。苦痛を伴わないとされるプロセスの一方で、処方までのハードルは極めて高い。医師による複数回の面談、治癒不能な進行性疾患や耐えがたい苦痛の医学的証明、そして意思能力の正常性が厳密に確認されなければ、一粒の薬すら処方されない仕組みが確立されている。