かつて祥伝社から刊行された本作は、それまでの漫画業界に存在した「クリエイターの私生活エッセイ」の常識を根底から覆した。稀代の絵師・安野モヨコが描く独特のタッチと軽妙なテンポ感。そこに登場するのは、日本のアニメーション制作を牽引する重鎮でありながら、私生活では特撮ヒーローやアニメのフィギュアに囲まれて生きる「真のオタク」の姿だった。
単なる暴露本ではない。過酷な締め切りに追われ、精神的にも極限状態に追い込まれがちなクリエイターたちの日常を、俯瞰した眼差しでポップに昇華させる手腕。オタクカルチャーのディープな世界観と、一般社会とのギャップが生み出す可笑しさは、読者を一瞬で魅了した。