絶対に失敗したくない夜を迎えるならば、大通り沿いの賑やかなチェーン店を離れ、暖簾の奥へと潜り込む覚悟が必要だ。現地を取材した記者が出会ったのは、愛媛県酒造組合に加盟する小さな酒蔵がごく限られた特約店にしか卸さない限定醸造品。いわゆる「隠し酒」である。冷えた小瓶から注がれる澄んだ一滴は、白身魚の繊細な脂の旨味を完璧に引き立てる。
そして圧巻は、〆に味わう「鯛めし」だ。松山では、生の鯛を特製タレと生卵で和えて白米に乗せる宇和島流と、出汁とともに丸ごと釜で炊き込む炊き込み流の双方が凌ぎを削る。常連が教えてくれた穴場ルートでは、その日の仕入れに応じた最高の調理法で振る舞われる。ネットの評価件数に惑わされず、店主の手元を見つめるカウンター席こそ、感動の一夜をもたらす秘密基地だ。