三合会の存在は、皮肉にも世界のエンターテインメント産業に多大なインスピレーションを与えてきた。特に14Kや新義安の影響力が色濃かった80年代から90年代にかけての香港映画黄金期には、裏社会と密接に結びついた映画産業から無数の傑作が誕生した。チョウ・ユンファが二丁拳銃を手に疾走する姿は、世界中の観客に強烈な美学を植え付け、独自のクライムスリラーというジャンルを確立した。
実態をより冷徹かつリアルに描き出した名匠ジョニー・トーの監督作『エレクション』は、組織のトップ座を巡る醜い権力闘争と血塗られた伝統の虚無感を暴き出し、世界的な評価を獲得した。また、警察の潜入捜査官と裏社会のネズミが交錯する傑作『インファナル・アフェア』は、光と影の境目が曖昧になった現代社会の暗部を見事に切り取っている。スクリーンの美学と現実の残虐性の間には、常に複雑な愛憎関係が存在していた。