過去に文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞をはじめとする栄誉に輝いてきた実績は、その表現が単なる娯楽の範疇に留まらないことを証明している。審査員や批評家たちが一様に舌を巻くのは、膨大な資料に裏打ちされたリアリティと、極限まで無駄を削ぎ落としたヒューマンドラマの純度の高さだ。
声高なメッセージを押し付けるのではなく、読者自身に物語の行間を歩かせる。そこにあるのは、圧倒的な観察眼に支えられた人間への信頼だ。だからこそ、世代や国籍を問わず、作品に触れた者は自分自身の記憶や大切な誰かの面影をそこに重ね合わせることになる。