奥入瀬渓流を巡る交通政策で欠かせない視点が、「奥入瀬渓流エコツーリズムプロジェクト」によるマイカー規制です。なぜこのような規制が導入されているのか――その根本的な理由は、「世界水準の自然環境保護」と「歩行者の安全確保」、そして「排気ガスによる生態系への負荷軽減」にあります。1936年の国立公園指定以来、国道102号は自然景観の中を直接通過する幹線道路として利用されてきましたが、紅葉シーズンの慢性的な渋滞は、渓流の静穏な景観を損ない、排気ガスによる苔や樹木への悪影響が懸念されてきました。
この課題を解決するため、例年10月下旬の特定日(通常は木・金・土・日の4日間程度)において、惣辺(そうべ)交差点から子ノ口交差点までの区間で一般車両の通行止め(マイカー規制)が実施されます。この規制期間中、奥入瀬渓流館がある焼山地区は、マイカーから公共交通へ乗り換える「パーク&ライド」の中核基地となります。
2026年の交通体系においても、規制日に合わせて高頻度のシャトルバスが運行されます。奥入瀬渓流館駐車場に車を停め、環境協力金を含むシャトルバスチケットを購入することで、渓流内の主要見どころへスムーズにアクセスできる仕組みが確立されています。
さらに、自由度の高い移動手段として定着しているのが「電動アシスト付きレンタサイクル」の活用です。奥入瀬渓流館を運営する現地組織等により、焼山(奥入瀬渓流館)で借りた自転車を、十和田湖畔の「子ノ口」や中流の「石ヶ戸」で返却できる乗り捨てサービスが運用されています。奥入瀬渓流館から子ノ口までは全長約14km、標高差は約200mの緩やかな登り坂ですが、電動アシスト自転車であれば体力に過度な自信がない方でも約1.5時間〜2時間で快適に走破可能です。車列の渋滞を横目に、清流のせせらぎとマイナスイオンを全身で体感できる移動術として、旅行者の間で極めて高い評価を獲得しています。