「大魔王」というモチーフは、鳥山作品を語る上で欠かせない重要キーワードだ。『Dr.スランプ アラレちゃん』のニコチャン大魔王から、後に世界的大ヒット作となる『ドラゴンボール』のピッコロ大魔王へ。同じ「大魔王」の名を冠しながらも、コメディの象徴から絶対的な悪の恐怖へと180度舵を切った表現の振れ幅に、当時の読者は度肝を抜かれた。
しかし、よく観察するとピッコロ大魔王もどこかコミカルな一面や、憎めないカリスマ性を持ち合わせている。ギャグアニメで培われた間(ま)の取り方や、キャラクター同士の絶妙な掛け合いのテンポは、本格的な戦闘漫画へとジャンルを変えても脈々と息づいていた。この圧倒的なストーリーテリングの変遷こそが、鳥山明という稀代の天才の真骨頂である。