両作品を語る上で欠かせないのが、タイトルに含まれるアイヌ語「カムイ(kamuy)」の意味です。アイヌ語においてカムイは、一般的に「神」や「霊的存在」と訳されますが、その本質は人間に恵みや災厄をもたらす動植物、自然現象、道具など、あらゆる事象に宿る尊い存在を指します。
『カムイ伝』における主人公「カムイ」の名は、忍びの世界から抜け出し、厳しい身分制度と孤立無援の荒野を生き抜く少年に与えられた象徴的な名前です。作中では、理不尽な人間社会の階級支配に対峙する、冷徹で野生的な個の強さを表す記号として機能しています。
これに対し『ゴールデンカムイ』におけるタイトルは、直訳すれば「黄金の神」あるいは「黄金の霊魂」となります。作中では莫大なアイヌの隠し金塊そのものを指すだけでなく、登場人物たちが追う宿命、あるいはヒロイン・アシㇼパが体現するアイヌの精神性など、多重のメタファーとして配置されています。同じ「カムイ」という言葉を採用しながらも、白土作品では「孤高の反逆者」、野田作品では「自然崇拝と人間の業を包み込む存在」という明確なアプローチの違いが見て取れます。