村瀬という老獪かつ悲哀に満ちた男を完璧に体現したのが、日本映画界が誇る名優・石橋蓮司だ。追い詰められるにつれて見せる焦燥感、媚びと強気の狭間で揺れ動く表情の演技はまさに圧倒的。暴力の渦に巻き込まれ、プライドを打ち砕かれていく男の惨めさを、これ以上ない生々しさで演じ切った。
撮影現場において、北野武監督特有の緊張感あふれる長まわしや突然の指示変更にも、石橋は見事に応えてみせたという。保身のために右往左往し、部下を見捨ててでも生き残ろうとする人間の醜悪さと滑稽さ。それをリアリティたっぷりに描く石橋蓮司の怪演があったからこそ、作品全体のサスペンスが飛躍的に高まったことは疑いようがない。