スマートフォンを開けば、メルカリ(Mercari)やヤフオク!(Yahoo! Auctions)で瞬時に世界中の古着が検索できる時代だ。アルゴリズムが最適化された相場を提示し、キーワード一つで欲しい服が自宅に届く。ではなぜ、わざわざ車を走らせて郊外の古着屋を巡るのか。
理由は極めて明快だ。オンライン取引の現場は「検索された時点で相場が確定する世界」だからだ。出品者も購入者も相場を熟知しており、価格の歪みは一瞬で買い占めボットや転売ヤーによって平らにならされてしまう。
対照的に、郊外の実店舗には「検索不可能な余白」が無数に残されている。ウール製品のずっしりとした重み、経年変化によるコットンの褪色具合、ジッパーの噛み合わせ、そしてタグの微細なステッチの違い。五感を使って生地に触れ、埃っぽいラックの中から自らの審美眼だけを頼りに至高の一着を引き抜く。その瞬間の脳内物質の分泌こそが、デジタル全盛の今だからこそ際立つリアルの醍醐味だ。